「東大に入ったからといって、将来安泰って時代じゃないよ」
息子トムが東大に合格したという噂が周囲に広がり、中にはわざわざ上記のような苦言を呈してくる方もいました。やはり「子供が東大に入って、さぞや鼻高々なことだろう」と思われる方もいるのだと思います。子供の進学先というものは、可能な限り伏せておくのが得策だと後になって思います😓。本人達はそんな風に思っていなくても、要らぬ誤解や嫉妬を知らないところで受けるものです。
東大に入れたいと思った事は一度もありませんし、そもそも親が企てて入れるような大学でもありません。私は親が子供の進路に干渉して影響力を与えうるのは中学受験までと思っていて、大学受験においては子供の将来への希望や受験自体への本人のモチベーションが全てだと考えているので、そこに親が干渉する事自体が無駄だと思うのです。しかしながら大学受験を迎える年齢になるまでに、できる限り自分の将来の展望を持てるよう、ある程度の思考力や価値観を醸成させることにコミットしてきたつもりです。そのためには子供の成長過程で、その時々で選択しうる範囲内で、ベストの環境に身を置かせるようサポートしてきました。子供の得意分野を見出して、最大限に伸ばす手伝いをしてきたように思います。これは勉強に限らず、スポーツでも音楽でも、親業に熱心な方に共通することなのだと思います。
「東大の休学制度」
東大から配布された「入学手続き要領」の冊子に、「初年次長期自主活動プログラム(FLY Program(Freshers’ Leave Year Program)」というものを見つけて驚きました。2013年度から東大が導入した制度で、入学した直後から1年間の特別休学期間を取得できる制度です。目的は、学外でのボランティア活動や就業体験活動、国際交流活動など、長期間にわたる社会体験活動を行う事で自らを成長させる、自己教育のための仕組みだそうです。
「せっかく大学に入ったのに、いきなり休学するの!?」 私はトムに聞くと、
「それは海外の大学を受験する人のための制度だよ」とトム。つまり7月に入試があり、9月に入学となるハーバードやオックスフォード大などを目指す人達が、それまでのつなぎの期間として、東大を滑り止めに利用する制度だというのです。本来の目的とは大きく異なっていますが、そのような利用のされ方もあるのかもしれません。要するに上には上がいて、将来のグローバルリーダーを目指す人材は、東大ではなくハーバードやオックスフォードを目指すのだという事です。海外の大学に進学を決めれば、そのまま東大を辞退するのでしょう。
国立なので休学中は授業料の支払いは免除されます。しかもこのFLY Programでは最大50万円の支援金も付与されるとの事なので、この制度を海外の超難関大の滑り止めとして利用する人がいてもおかしくはありませんね。
もちろん大学が提唱する本来の目的のために、制度を利用する学生が大半でしょう。世界一周の放浪の旅に出たり、企業のインターンシップに参加したり、起業ネタを見つけてスタートアップを立ち上げる学生もいます。熾烈な受験戦争で視野狭窄に陥った学生を解きほぐし、自分探しの猶予を与えて可能性を引き出そうとする東大の挑戦はさすがだと思います。
「将来のビジョンを持つこと」
結局のところ、「東大に入ったら人生上がり(≒安泰)」と考えている学生は「東大までの人」であり、最悪は燃え尽き症候群に陥ってしまいますし、「東大は通過点であり在学中に世界を経験して何事かを成したい」と考える学生は「東大からの人」となるのだと思います。それは子供の人間力にかかっていて、人間力とはそれまでの18~19年間の、親を含めた環境によって醸成されるものだと思っています。
なにやら抽象的になってしまいましたが、「東大生の親」になって考えさせられる事なのでした。 子供の良い習慣を育むという点で、我が家のケースと符合する部分が多いと感じたので書籍をご紹介しておきます😊東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?