母胎に宿る命にいち早く気づいたトム
トムが5歳の時、妹(JK娘)が生まれました。その当時を今思い返すと、後悔する事や不思議な事が沢山あります。
下の子の妊娠を予感した時の事、まだ夫には打ち明けておらず、病院にも行く前のごく初期の時の事です。トムが突如「おもらし」や「おねしょ」などの失敗を繰り返すようになりました。それまでは順調にトイレトレーニングを完了していたのに、です。
毎日保育園から濡れた布団やパンツを持ち帰りながら、お迎えの車中でトムを厳しく叱ってしまった事もありました。
「ごめんなさい、ごめんなさい」とトムは泣くばかり。
保育園の先生からは、
「もしや何か不安定になる要素が、お家でありませんか?」などと言われ、思い当たる節もなく、途方に暮れました。
弟や妹が生まれて「赤ちゃん返り」する話はよく聞くのですが、まだ母親本人しか知らないような妊娠の初期に、トムが妹の存在を知る筈もありません。しかし今思えば、母親の胎内に宿る新たな命の存在をいち早く察知し、親の愛情を奪われるのではないかと本能的な脅威を感じていたのかもしれません。
おねしょやおもらしはしばらく続きました。
が、私はトムに、「赤ちゃんが生まれても、ママは世界で一番、トムが大好きだよ」と毎日言って聞かせました。また「おもらし」はするものだから仕方ない、と敢えて気にしないようにしていたら、次第に収まっていきました。
胎内記憶は存在する
またトムが満2歳になった時、意を決して「胎内記憶」について聞いてみた事があります。ようやく単語が話せるようになった2歳頃に、機を見計らって一度だけ質問をしてみました。何度も聞いたりするうちに、後天的に獲得した記憶とごちゃまぜになってしまうそうなので、一度だけの好機を慎重に狙いました
やっと2語文が話せるようになった2歳児のトムに、満を持して聞きました。
私: 「トム、ママのお腹の中にいたときのこと、覚えてる?」
トム:「…???」
私: 「お水がいっぱいあって、お風呂みたいなところ。きっとちゃぷちゃぷし
てたと思うよ。覚えてないかな?」
この間、トムは記憶をたどるかのようにボーッとすること30秒程度…決して急かさず、辛抱強く待ちました
私: 「…思い出したかなぁ?ママのお声、聞こえてたかな?」
トム:「…うん」
私: 「なんて言ってたかな?」
トム:「…おうた」
私: 「お歌?どんな?」
トム:「ふ~んふ~んふん~♪」
トムはハミングを始めました。それは恐らく「きらきら星」のフレーズでしたが、胎教のために私が歌った事はありませんでした。きっと保育園で聴いたフレーズなのだろうと、少しがっかりしました。しかし気を取り直して、
私: 「ふうん。よく覚えてるね。すごいねぇ。ほかにはどんなこと覚えてるかな?何が見えたかなぁ?」
と尋ねると、トムはおもむろに、幼い両手で小さなこぶしを二つ作り、自分のお臍の前に重ねて並べて、
トム:「しろーい、ながーいの。」
とあたかも自分のお臍から細長い物体が伸びてるようなを身振りをするではありませんか。
トムは妊娠中〜後期ごろ、臍の緒が首に巻き付きかけていると主治医から脅された事がありました。その後は自然にほどけたものの、自分のお腹から、長い臍の緒がいつも見えていた事を表現しているのだと判りました。
私はドキドキしながら、
私: 「へぇ~~~~、そうなんだぁ。ほかには何が見えたのかなぁ?」
トム:「……うーんとね、はさみ、じょきじょき。」
私: 「は、はさみ??」
トム:「じょきじょき、したよ」
そしてトムはおもむろに頭上を見上げて指を差し、
トム: 「ぴかーって、みえた。」
・・・鳥肌が立ちました。自然分娩だった私は、羊水膜が異様に頑強でなかなか破水せず、看護師さんが遂に医療用ハサミで切開した事実を指摘したのでした!
これには心底驚きました。夫も知らない私だけの出産時の秘話なのです。というか、些末な事なので特に誰にも語った事はありませんでした。
…そして産道を進むうち、頭上から光が見えた事を指摘したのです。胎内記憶というものは本当に存在するのだと、感動した瞬間でした。
今改めて思い返すと、トムは特にこの光のシーンを、両手を使って2〜3度、笑顔で話してくれた事を思い出しました
「(両手を頭上でひらひらさせて)ぴかぁ~って。ぴかぁ〜って。」
…10か月を過ごした暗い母胎の中から、初めて見る強い光に導かれて、ひたすらその光に向かって、きつい産道を一生懸命に全身で突進したのでしょう。それは苦痛ではなく、ウキウキわくわくの大冒険だったのではないか、とトムの笑顔を思い出して改めて思いました。胎児はきっとこんなふうに、ウキウキわくわくと喜びと期待に満ちて、誕生してくるのだと思いました。
(当時の様子は記念にビデオ録画しており、どのテープに録画したのか探すのが大変ですが、定年後に時間ができたら編集しようと楽しみにしています)
ちなみにJK娘も満2歳の誕生日に同じ質問をした際には、回らない口で、
「みかんのにおい」と、胎内の事を「あったかい、ぷうゆ(プール)」
と答えました。
JK娘を産んだ産院では、定期健診の際の病室や分娩室には常に柑橘系のアロマオイルが焚かれており、胎内というよりも、出産時の分娩室に焚かれていた香りを覚えていたのかも知れません。胎児の嗅覚がどこまで発達しているのかは謎なので…..
娘が「みかん」と第一声を発した瞬間は、すぐには何の事か分かりませんでしたが、ゆっくりと当時の状況を思い出し、それと符合した瞬間には、やはり驚いて身震いしてしまいました
二人とも、その後にまた同じ質問をしてみましたが、その都度、記憶はどんどん薄れて消滅していくのが分かりました。何やら寂しかったです。
4歳頃にダメ押しで聞いてみると、
「しらない!おぼえてない!わからない!」
とつれない返事が返ってきました。…でも、確かに覚えていたのです。私以外誰も知らない事実を語ったのです。
しかし冷静に考えてみれば、当たり前の事でもあります。母胎で胎児は脳を含むあらゆる機能を発達させて生まれてくるのであり、生まれた瞬間から脳が機能しだす訳ではないのだから、胎内の記憶があっても不思議ではないのですね。要は子どもが「覚えているかどうか」、親は「どのタイミングで聞くか」なのだと思います。
…かくいう私自身も、0歳児の時の局所的な記憶が鮮明にあります。
急に意識が鮮明になったかと思うと、隣の部屋の大人達の話声が聞こえてきて、(おそらく別室で一人寝かされていたのでしょう)それを聞きながら柔らかな産着の中で両手足を動かし、魚のように気持ちよく体を泳がせている記憶。ほんの一瞬ですが、暖かで幸せな記憶と感覚が、今でも残っています。
母に聞くと、確かに生まれて間もない頃、私は実家の居間の隣の客間に布団を敷いて寝かされていて、眠りから目覚めても泣かずに機嫌よくしている赤ん坊だったと言われた事がありました。
…昨日の事さえすぐに忘れる今日この頃なのに、です
人間の脳の神秘を感じますね☆